ぼやき

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先日の「洗濯石けんと硬度とコスト」にちょこっと論理の飛躍があったので、そこのところを補足しようと記事を書いていたら、まったく違った結論らしきものが出てしまったので、新に記事にします。

石けんが威力を発揮する pH 値は?

先日の記事でうちの水道水の硬度が 30ml/L でかなり軟水なので、石けんの使用量が少なくてすむことがわかりました。そして、石けんは、水溶液の ph がアルカリ傾けばそれだけ洗浄力が上がるようです。「洗剤・洗浄の事典」(奥山春彦・皆川基編著:朝倉書店)よれば、石けんがもっとも威力を発揮する最適な洗浄条件 pH 9.0〜10.5 のようです。

では、pH9.0〜10.5 くらいするには炭酸ナトリウムの量を1Lの水にどれくらい溶かせばいいのでしょうか。

炭酸ナトリウムを水に溶かした時の最大Phは?
上記サイトのよると、炭酸ナトリウム水溶液の濃度が仮に 0.1 mol/L(=10.6 g/L)であると、pH = 11.7 となるよう。強い塩基性ですね。

(炭酸ナトリウムの)濃度を C = 0.001 mol/L(上記の 1/100)にすると、pH = 10.7 くらいになります。

とのことですから、炭酸ナトリウムで pH 10.7 を得るための濃度は 0.106 g/L であることがわかります。別途きちんと計算してみたところ、pH 10.5 を得るためには 0.050 g/L であることがわかりました。

1回の洗濯を30Lの水で行うとして考えてみる

純石けんであるシャボン玉スノールを 30 L の水に溶かして洗濯することを例にとって考えてみましょう。ですので、最適な洗浄条件である pH 9.0〜10.5 を保つのに必要な炭酸ナトリウムの量は 1.5 g です。(カルシウムやマグネシウムが含まれていない蒸留水での話。)シャボン玉スノールの標準使用量は「水30Lに対して35g」です。ですので、最適な洗浄条件を得るための炭酸ナトリウムのシャボン玉スノールに占める割合は下記のように計算できます。

1.5 g ÷ (35g + 1.5g) = 0.041 = 4.1 %

液性を洗浄条件に適したアルカリにするだけなら、石けんへの混合率は5%もいらないのです。

石けん自体も弱アルカリ(pH10 前後のアルカリ性)なので、実際に必要な量はもう少しすくなくなるとも考えられますが、以上は不純物が何も含まれていない水での話なので、水中のカルシウムやマグネシウムと(時間をかけて)結合することを考えると実際もう少し多く必要なのでしょう。これは実験をしてみないとわからないですね。たぶん既存の論文や書籍を当たれば、石けんと硬度と pH についての実験は存在していそうですが。(※要調査)

炭酸ナトリウムだけで洗濯した場合を考えてみる

では、なんで、だいたいの洗濯用粉石けんには 35% ほどの炭酸ナトリウムが含まれているのでしょうか?

下記サイトの「25℃ Na2CO3 水溶液で脂肪酸混合物汚れを洗浄した際の各脂肪酸成分の除去率」のグラフを見てみてください。
→石鹸百科:アルカリ洗濯のメカニズム(1) 皮脂汚れの除去

こちらのサイトはよくよく知ってみるとかなりデタラメなことが書いてありますが、「出典:小谷・新・藤井・奥山, 油化学, 27, 7, 450-453,1978」とありますので、グラフはちゃんとした論文からの引用なんでしょう。(本当はこの論文も当たらないといけないんだけれど。なぜかというとどんな条件で実験されて得られたグラフかサイトにはまったく書いてないから。)

Na2CO3 は炭酸ナトリウム(炭酸ソーダ)のことで、夏場の25℃というのは常温の水ということでしょう。脂肪酸汚れっていうのは、人間から出る皮脂などの汚れのことをいっているものと思われます。

結論として下記のように述べられています。

炭酸ソーダ(Na2CO3)濃度が0.05%~0.1%のあたりから、脂肪酸汚れが良く落ちていることが分かる。(水30リットルに対して炭酸ソーダ15~30gを溶かした濃度に相当する。

注意したいのは、これは、炭酸ソーダ(炭酸ナトリウム)のみで洗浄した場合の脂肪酸(皮脂などの汚れ)の落ちを実験した結果です。(石けんの助剤のアルカリ剤として入れた結果ではありません。)

炭酸ナトリウムだけで洗濯した場合の量を石けんに混ぜてみると

もし、この結果を元に、石けんに対する炭酸ナトリウムの割合を求めたらどれくらいになるんでしょうか。シャボン玉スノールを例に挙げて計算してみましょう。先程も出てきましたが、シャボン玉スノールの標準使用量は「水 30 Lに対して 35 g」です。

15 g ÷ (35 g + 15 g) = 0.3 = 30%
30 g ÷ (35 g + 30 g) = 0.4615 = 46.2%

つまり、「25℃ Na2CO3 水溶液で脂肪酸混合物汚れを洗浄した際の各脂肪酸成分の除去率」の実験をもとに、石けんに対する炭酸水素ナトリウムの算出すると 30 % 〜 46.2 % ということになります。

これはどういうことでしょうか? マグネシウムと結合する力が炭酸ナトリウムより石けんの方が強いので、炭酸ナトリウム 35 % が入った粉石けんで洗濯することは、石けんで洗濯しているというより、炭酸ナトリウムで液性をアルカリにした洗浄液で油汚れを落としているという洗濯方法ということが考えられます。じゃあ、炭酸ナトリウムだけ入れて洗濯すればいいんじゃないの? って疑問がわいてきますね。

炭酸ナトリウムの pH 値をおさらいしてみる

炭酸ナトリウムの pH 値は下記の式で求められます。
炭酸ナトリウムを水に溶かした時の最大Phは?

pH = -1/2・log(Ka・Kw/C)

Ka = 4.7×10-11 (mol/L) ;炭酸の第2段階電離定数
Kw = 1.0×10-14 (mol2/L2) ;水のイオン積
C ;濃度(mol/L)

炭酸ナトリウムは 1 mol = 106 g であるから、以上から下のような濃度 (g/L) と pH の関係のグラフが書けます。

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炭酸ナトリウムの濃度 (g/L) と pH の関係

pH 11.5 以上になるとほとんど横ばいになることがわかる。対数 (log) のグラフの特徴ですが…。高校数学で習いましたよね。確か…。

炭酸ナトリウムが 35 % 入っていて、標準使用量が水 30 L に 40 g の粉石けんがあるとします。炭酸ナトリウムは 40 g × 0.35 = 14 g 含まれていることになります。水に溶かして、1Lあたりに換算すると、14 g ÷ 30 = 0.467 g/L。pH でいうと 11.0。ちょうどグラフの傾きが45度より低くなったあたりになります。

これ以上いれても、pH の値は高くならないその許容範囲のライン pH 11 であり、炭酸ナトリウムが 35% 含まれている理由なのかもしれません。

ちなみにこのときの炭酸ナトリウムの濃度は下記のよう。

14 g ÷ (30 L × 1000 g + 40 g) = 4.660 × 10-4 = 0.0466 %

炭酸ナトリウムだけでも十分な洗浄力が得られる値ですね。

炭酸塩の30%分は増量剤?

以上より、石鹸の洗浄力を引き出す最適な洗浄条件 pH 9.0〜10.5 であり、5% 程度の炭酸ナトリウム(炭酸塩)が入っていればよいことがわかった。じゃあ、残りの 30% はなんなのよ、っていったら、純石けんの含有量を減らすための増量剤と考えるのが妥当でしょう。末端価格で純石けんは炭酸ナトリウムの2倍します。純石けんの割合を少なくできれば、安く商品を提供できるのです。そして、増量しても品質を保てるぎりぎりのラインが 35 % と考えればすっきりします。

また、硬度が高い地域の水道水で洗濯した場合、石けんカスが多くできてしまい、石けん本来の洗浄力が期待できない場合がありますが、炭酸ナトリウムが 35 % 入っていれば、アルカリ水溶液で洗濯している状態に近くなるので、とりあえず、汚れは落ちる、ということです。

そして、見方を変えればこうも考えられます。炭酸塩が35%含まれた粉石けんは優れたアルカリ洗浄剤である。なぜなら、水に溶かすと脂肪酸汚れがよく落ちる 0.05 % 程度の炭酸ナトリウムを含有しており、水道水中のマグネシウムやカルシウムは脂肪酸と結合し石けんカスとして沈殿し、優れた液性を発揮し、なおかつその界面活性剤の働きで繊維の奥の汚れを落とすことができる。

考え方次第

ぶっちゃけ、考え方次第なんですよ。自分が何を大切に思っているかで選ぶ商品も変わってくるはずです。

わたしの場合は自分の皮膚が第一です。なので、なるべく添加物の入っていない品物を選んで、洗濯にもお皿洗いにも体にも髪の毛にも使ってます。全部石けん 98 % 以上のもの。それ以外は受け付けないんです。いくら安くてよいといわれる品物があったとしても、わたしがそれを使うと手が荒れ、まぶたもただれる。そして、医者にかかると結局医療費という形で自分の財布にはね返ってくるし、かゆい思いもする。だったらそうじゃない選択肢があるのなら、それを選ぶのが当たり前。

洗剤や石けんをつくっているのも化学メーカー、医薬品をつくっているのも化学メーカー。医者もまた患者がいなくなったら、病院つぶれちゃいます。誰も本当のことはいってくれません。(まれに本当のことを指導してくれるいい医者もいますが、ほとんどの医者は対処療法ですよね。)だって、もうからなくなるもの。世の中もちつもたれつ、その中にアトピー性皮膚炎や主婦湿疹という皮膚病もあるんでしょう。

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